西の花月に東は松勝月とすっぽん……その真相は?


 わが長崎食文化研究会にある日、一通の投書があった。
「東長崎の松勝という和風料理の店で一度試食して下さい。浜勝ではありません、松勝です。経営者の松尾勝博氏によれば、ライバルは花月らしいですが、とにかく味も質も値段も問題です。花月とは月とすっぽんのちがいです……云々」と記されていた。その後、投書が続き無視できなくなった。
 過日(四月の第二火曜日)、当研究会スタッフはチームを組み、国道34号線沿いに車を走らせた。
東長崎の長崎植木センター入口に 「松勝」という和風料理店が確かにあった。主人の名前が松尾勝博であるところから、姓と名から一字づつとって 「松勝」と安直に命名したのであろう。楼閣風の店構えはなかなかのものである。そのあたり一帯は植木の里として有名な所で、松勝の玄関先にも立派な松の植え込みが数本並んでいた。店の表にうなぎ、名物瓦そば、天ぷら、うな重、天童、活造り、焼肉、他一品料理と記してあったが、さてさて、昼時だというのにうなぎの匂いもしないし、天ぷらの匂い匂いもしない。営業時間は午前十一時半〜午後二時、午後五時〜午後九時。八時半オーダーストップ(但し、準備の都合上変更がございますのでご了承願います)と明記してあった。準備中という案内もないが、店が開いていないのだから試食のしょうもない。そこで当会スタッフは、ひとまず試食会は断念、つてをたどり、まずは松勝についての周辺調査を試みることにした。
 地元の食通Y氏によれば投書にたがわず、和風料理・松勝の評価は散々なものであった。
「兄貴の博司さんから『弟の店ば使うてくれろ』と頼まれたけん法事に使うたとです。ばってん松勝は値段がとはなか、みんながっぽりしたとですばい。値段だけは花月んごと、高級料亭並みの一流ばってん、味は三流の田舎料理ですたい。サービスもようなかし、気の利いたよか姉ちゃんもおらん。
おりゃ (私という意味)、わかすぎやら川徳やら、何回もいったことのあるばってん、松勝は浜勝どころか日見峠からこっちでは、わかすぎにも川徳にも数段は落ちますばい。主人の松尾勝博さんは若か頃どっかで板前のまね事ばしたらしかばってん大した料理は作りさらんごとありますなあ、グルメじゃのうしても、二度といかんじゃろと患います、期待薄ですたい。松勝には仲居さんも常備はおらんようです。常備にすると店がひまでん人件費は出て行く、そがんただゼこぼやるごとあることはされん、と松勝さんが言うとったげなです。祝い事や法事でようけ人が集まる時だけ、兄貴の嫁さんやら姉さんたちやらば枢り出して、にわか仲居にしとるげなですたい。こげん店は古賀の恥ですばい。松勝さんには、こそこそ女遊びばするひまのあったら、もっともっと料理の腕ば磨け、とそがん言いたかですばい。店ばするならするで、ちゃんとした料理ば出してもらいたか、そうじゃなかなら、こがん店は、はようやめて仕出し専門にでもしたらよかとですたい」
 もちろん当長崎食文化研究会はY氏の証言を鵜呑みにするものではない。当然のことながら、松勝の座敷にあがり、しかるべき料金をお支払いして松勝の料理を一品づつ逐次堪能したいと患っている。

長崎食文化研究会
代表 越中 太


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