チリのボーリングは最上位 西海市のボーリングは最下位


 南米チリの鉱山事故で三十三人の 男たちが七百メートルの地下に生き 埋めになった。男たちは二カ月間地 獄のような地の底で生き抜き、全員 無事救出という奇跡の生還を遂げた。
 その世紀のニュースは世界をかけ めぐり地球の反対側に位置するわが 日本にも届いた。大方の人々がテレ ビの前で釘づけになった。
 その救出劇の裏には目的地点まで 縦穴を掘っていく掘削技術(ボーリ ング工事)の正確さと迅遠さ、そして地上の人たちと地下の人たちを結 ぶ愛のコミュニケーションがあった。
 それら一連の筋書きのないドラマは救出された鉱山労働者と抱き合い、キスをし、喜びを分かち合っ て大いに点数を稼いだ。世論の支持率はうなぎ上りに上昇し、大統 領の政治的危機は回避された。
 ところ変わってここは長崎県の西海市。崎戸、大島、大瀬戸、西海、西彼の五町が合併してできた人口三万五千人の地方都市である。 県都長崎市と県北の中心都市である佐世保市を結ぶ国道206号線 沿いに展がる風光明媚な田園地帯である。
 オランダ村のあった町と 説明した方が全国的には分かりやすい。 オランダ村はバブルがほじけた後、客足が遠のき倒産、閉鎖され た。国道から見える巨きな風車が風の日にも回ることなく、朽ち果 てていくのを待っている。

西海市 田中市長

西海市 田中市長

 西海市では国の基幹産業の一つであった石炭産業で景気に沸き、 チリのコピアポのように鉱山労働者とその家族たちで人口が膨れ上 がった時期もあった。だがそれも今ははるかな昔。崎戸炭鉱、大島 炭鉱、池島炭鉱、松島炭鉱の火が消えて久しい。そしてオランダ村 がつぶれてしまった今、新西海橋が開通してもとどまる客は少ない。 西海市のあちらこちらに残された夢のなごりを目にするたびに胸が 痛くなる思いがするのは筆者ばかりではないはずだ。
 町起こしのために何か名案がないのか、西海市ではいつもこのこ とが話題に上っている。そうした折、西海市の景気浮揚の苦肉の策 とも思えるようなボーリング工事の話が持ち上がっている。西海市 発注のれっきとした公共工事である。事業名は 「七釜井戸試掘・揚水試験業務委託」。
 井戸は一体何のために掘られるのか、一般的に考えられるのは飲料水ということだが、西海市長の目的は明らかにそれとは違うのだ。 地下深く穴を掘って水を確保するというのは、どうやら工業用水の ためのようである。しかしながら焦眉の急として今すぐ必要とされ ている水ではない。アフガニスタンのペシャワールの人々が喉の渇 き、大地の渇きを癒すために必要とされている井戸ではないのだ。
 地底に穴を掘っていくボーリング工事とい う点ではチリと西海市は似たようなものだが、 西海市の場合はモクモクしながら掘り続ける その井戸掘り工事が完工⊥ても、誰も田中隆 一市長にキスはしないだろうし、抱き合って 喜ぶ者もないだろう。西海市民のために本当に必要な工事なのか、その井戸の水をどこの誰がどれだけ必要とし ているのか、そんな基本的な事柄を整理して再考したら首をかしげ たくなるような疑問点が次から次に浮上してくるのである。西海市 民に唾を吐きかけられぬよう、石のつぶてを投げつけられることの ないよう用心しておいた方が身のためではなかろうか。この際、失 礼を承知でこのことを田中市長に、今ここに警告しておきたい。 このたび創刊した「さいかい新報」に西海市発注のボーリング工事 をめぐる疑惑について一通の投書が届けられた。以下投書の一部を 抜粋、紙上公開し弊紙の解説と検証を加えるものとする。


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